各地で会えるイルカ・クジラ
日本海のオウギハクジラ

「日本海のオウギハクジラ」
写真:現地で個体回収後、マリンワールド海の中道さんから連絡を頂き、合同調査を行ったオウギハクジラ。全身(上)、頭部(下左)、胃内容物(下右)。
オウギハクジラはアカボウクジラ科の一種で、日本近海を含む北大平洋の北部に棲息していると言われています。日本では、西の端は福岡県津屋崎付近、北端は稚内に至る日本海側のほぼ全長から、オホーツク海沿岸などで漂着が知られており、写真は2002年2月20日に福岡県津屋崎恋の浦でストランディングしているところを発見された成熟した雄の個体です。体長は462cmで、頭が小さく、下あごには名前の由来ともなっている広げた扇を逆さにした形の歯が1対だけ生えています。歯が歯茎から萌出するのは成熟した雄のみで、子供や雌では萌出してきません。この1対の歯は、繁殖期に雄同士で闘争する際に使われると考えられていて、成熟した雄の体には、この歯によるといわれる線状の傷跡がいくつも見られます。写真の個体の歯には、エボシガイの仲間がぎっしり付着して形が良く解りませんが、丁度「おうぎ」の持つ部分(尖った箇所)が少しだけ見えていますね。オウギハクジラは近年まで漂着報告が少なく、分布域が限られているため、希少な種であると考えられていましたが、日本海セトロジー研究会による日本海沿岸の漂着鯨類調査などから、我が国では毎年5〜20件の漂着があることが判明し、これらの漂着個体から、今まで全く判っていなかった食性や繁殖に関する情報が少しずつ解明されてきています。またこの個体の胃内容物を調べたところ、イカのカラストンビ(燈色枠内)が見つかりましたが、それ以外にも人間が捨てたビニールやロープも随分入っていました。このクジラはビニールやロープを餌と間違えて食べてしまうのか、こういった物が良く胃の中から見つかります。生活史の良く解っていない動物のお腹の中から人工物が出てくるのは、ショックであると同時に私たちの生活がそのまま彼らにつながっていることを痛感させられます。
オウギハクジラの生態はまだほとんど解っていませんが、毎年初冬から初夏にかけて日本海側に漂着が報告されています。新潟から佐渡へ向かう佐渡汽船からはカマイルカをはじめ、種不明のクジラも幾度となく見られていて、これらのクジラはひょっとしたらオウギハクジラなのかもしれませんね。
投稿者 るき : 更新2005年06月02日, 00:07